「へぇー、真城くんって前はサッカー部だったんだ!」

「そうなんだよね。今は部活しようか帰宅部のままでいようか考えているところ。」

クラスの女子と話しているとき、とってもとってもハルトくんみたいな王子様対応をする真城くん。
常に微笑みを携えていて、その言葉に刺々しさは一切見受けられない、マイルドな話し方。

まさにハルトくんな彼を隣で観察できるのは嬉しい悲鳴なんだけど……、


「…なに、伊住さん、見ないでくれない?」

私に対してはこの冷たい対応なのです…。
他の女子には、みーんな優しくお話してるのに、私にだけすごく刺々しい…。

それもまぁ、昨日あんなにヲタクモード全開にしちゃったから仕方ないこと…、だけど…‼︎

「私にも王子様してください!」

そう懇願しても真城くんはただただ冷たい目で私を見るだけで、

「絶対嫌だ、君のために"ハルトくん"になんかな ってあげない」

昨日と同じように、私の『推し』にはなってくれないらしい。
悲しみに打ちひしがれた私はフラフラとひなちゃんのところへ行って、

「真城くんが王子様してくれない…‼︎」

と文句を言いに行ったのに、ひなちゃんは次の授業の予習を豪速球で終わらせているためまさかの返事すらしてくれない。

そんな、ひなちゃんまで冷たいなんて…‼︎
と思ったけれど、

ひなちゃんは元々こういう人でしたね、はい。

だから私も「ひなちゃんんんん!」と叫びながらひなちゃんの背中をポコスカ叩いて休憩時間を過ごすことにしたから、

だから、全然聴こえていなかったんだ。


「真城くん、桜ちゃんのこと好きだよねー?」
「桜ちゃんにだけ素で話してるから、絶対そうでしょ!」

そんなふうに女子に取り囲まれた真城くんが言われていて、

「……どうだろうねー?」

そんなふうに、彼が意味深に答えていたなんて、
知る由も無かったんだ…。