そのチケットを超大事に握って、
入場の列に並ぶ。

「どうしよう…、ねぇ、真城くん、どうしよう…」

緊張が最高潮になって、ドキドキが止まらなくて、べしべしと真城くんの腕を叩く。

真城くんは依然として無表情で、

「悪い席だったら僕の顔見とけば良いんじゃない?」

とか言ってくる。

「真城くんはハルトくんの代わりじゃないんだからダメ!」

緊張したままそうやって真城くんに返して、 

1人ドキドキしていたから、彼が私の言葉に感動しているのには気づけなかった。


「…代わりじゃ、ないんだ。」


知らないうちに、彼がずっと抱えていた不安を溶かしていたらしいけれど、

ごめんね、私は今最高に緊張している!

とうとう係員のお姉さんのところまで来てしまって、

チケットを2枚重ねて渡すと、引き換えに抽選結果の紙を渡された。

会場に入って、 

「…真城くん、席見るよ?」

ゴクリと唾を飲んでからそう言うと、「どうぞ」と返される。

クルリ、結果の紙を返して見ると、



        ………え。


「…まし、え、ましろ、え、ましろくん、」

「なに、途中呼び捨てになってますが」

「あの」

「はい」

「あの、前から、三列目です」  

「それはすごいですね」


なんとなんとなんと、


「真城くん!!前から!!サンレツメ!!」

そう言って真城くんの腕を持って興奮のままに揺する。

「うん、良かったね」

真城くんは小さい子の言葉に同意するようなテンションだけど、

   そんなの関係ねぇ!(某芸人)

真城くんの手を引いてピョンピョンとテンション高くアリーナに入って、

前から、三列目、アルファベット的に…


「…前から、近い…」

その席に行くととんでもなく近くてテンションしか上がらない。

開演まであと30分。

ペンライトを持って、あぁ、どうしよう、ドキドキする、と思いつつ気持ちを落ち着けて。


  あっという間に、そのときは来た。