手を繋いだまま、2人、沈黙が生まれる。
「ご、ごめんね真城くん!お兄ちゃん、なんかうるさい人で…」
その沈黙を破ったのは、桜。
僕の方には目も合わせず、ただ地面を見て謝っている。
合わない視線は、僕たちの今の距離。
きっと、そうでしょ。
だったら、
……そんな距離、いらない。
桜の頬に控えめに手を当てて、自分に向かせるように顔を上げさせる。
驚いたような、困惑した彼女の視線がぶつかる。
ねぇ、桜は知らないだろうけど。
その黒く綺麗に透き通った瞳に、
僕が映ってるってだけで、どうしようもないほど嬉しくて、
僕以外の男が映るかと思うと、どうしようもないほど狂いそうなんだよ。
こんなに重い気持ちは、絶対に君には見せないでおくから。
ただの、愛情だって見せかけるから。
「桜、僕と、もう一度付き合ってください」
そう言うと、桜は目を見開いた。
「僕にとって、君ほど可愛い人はいないし、君ほど好きになれる人もいない」
わかってほしいこの気持ちを伝わるように、心から言うと、
桜は、じんわりと涙を目に浮かばせた。
どうしたってこの人の涙に弱い僕は慌てて、
「ごめん」と言うと、
「…、ち、がう」
泣きそうになりながら否定して、
「…私は…、私は、真城くんの隣にいたい」
そうやって、言ってくれるこの人を、好きじゃなくなる日が来る気がしないんだ。
僕は、優しく両手で桜の頬を包んで、
「…じゃあ、桜は僕の彼女続行ね」
そう言って、キスを落とした。
そんな僕の言葉が、
君をもう逃がさない宣言なんだってこと、このかわいい彼女は気づかないんだろうね。



