ファミレスに着いて、2人でお昼ご飯。
「最後のハルトくんが〜」
と熱弁を奮ってはオムライスを食べ、熱弁を奮ってはオムライスを食べ、を繰り返す私を見て、
呆れ顔の嶺くん。
「君、懲りないね…いや良いんだけど」
とか言いながらも話を聞いてくれる。
そんな彼はよくわかんないお洒落なパンのプレートを食べてる。何あのお洒落なやつ?
ご飯を食べ終わって、
「ちょっとトイレ行ってくるね」
と席を外した私。
戻ってくる頃には…、
嶺くんの周りに、女の人たち。
…あの女の人がいるところ、私が座ってたところだし、嶺くんのすごく近くで話す人もいる。
会話は聞こえないけれど、
女の人たちが、すごく美人だってことは分かる。
…どうしよう、近づけないや。
と、立ちすくんでいると、
不意にその中の1人の女性と目があって、
その人の唇が「 あのこだれ? 」
と動いたのがわかった。
それを合図に、女の人たち、そして嶺くんと目が合った瞬間、
一段と、嶺くんの声が大きくなって、鋭くなって、
「…さっきから言ってんじゃん、あの子が俺の彼女だし、そこは彼女の席。」
「だから早くどっか行ってください、彼女を傷つけるんだったら、俺、まじで容赦しないですよ」
そう言い残すと彼は私の方まで急いで駆け寄ってきて、
「桜、ごめん、嫌な思いさせたね」
そう言って不安そうに私の顔を覗き込む彼に、私は笑って見せた。
「大丈夫だよ。嶺くんが自分のこと俺って言ってるの、新鮮だね」
そう言うと、嶺くんは少し安心したように、
「あー、ちょっと苛ついちゃって。…、あ、もういなくなったから、荷物取って出よっか」
そう言ってくれる彼に、うん、と頷く。
彼が、私を何より優先してくれたことが嬉しくて安心したけれど、
正直、彼みたいな人は、さっきの女の人たちのように綺麗な人が似合う。
私なんて、平凡な、もしかしたら平凡以下かもしれない人間が、
どうして彼の彼女なんてさせてもらっているのだろう。
そのあとはショッピングをしたり、
私の好きなアイスを食べてみたり。
すっごく楽しくて充実した時間だったから、
心の中にある不安を、見て見ぬふりしておいた。
「嶺くん!今日は楽しかったね」
夕日さす帰りの電車で、そう嶺くんに笑いかけると、彼も笑ってくれた。
だけど、何か彼の笑顔には心配の色が隠れていて。
「…嶺くん、どうかした?」
そう聞くと、「あぁ、…」と言って、少し悩んでから、
「桜は、本当に今日楽しかった?」
まるで、何か見透かされているみたいに、聞かれた。
もちろん、楽しかった。…そう、楽しかった。
「当たり前じゃん!楽しかったに決まってるよ」
そう言うと、少し安心したように、
少し、納得していないように、彼は笑った。
もうすぐ、駅に着く。
私たちのはじめてのデートが終わる。
少しの、違和感を残して。



