手を繋いで歩き出してすぐはやっぱり気まずくて、会話も途切れ途切れだったのだけれど、

だんだんと普通に話せるようになって、

アイスクリーム屋さんに着くころには、ずっと笑顔で話していた。  

この前の試験のこと、面白い先生の話、
意外だったのは真城くんの好きなバンドの話、
ハルトくんについて話そうとするとムッとされたのでそれは控えたけど…。

もう、楽しくて仕方がなくて、アイスクリーム屋さんに着くのも惜しかった。   



けれどやっぱり、アイスを目の前にするとテンションが上がりまくってしまい、 

「真城くん!真城くん!これ絶対美味しいに決まってるって感じで美味しそうじゃん!」

と、意味不明のことを言いながら、目の前に置かれたアイスを見てと言わんばかりに真城くんの肩を軽くペシペシ叩く。

そんなうるさい私にも真城くんは怒らずに、優しい表情で「うん、食べていいよ?」と、スプーンを渡してくれる。

それを受け取った私は、超高速でアイスを一口食べると……


「………ッ‼︎」

おいしい…‼︎おいしいおいしい‼︎
感動して言葉の出ない私を見ながら、

「…へぇ、そんな美味しいんだ。
僕甘いもの苦手だけど、一口もらっていい?」

そう言って聞いてくる真城くんに、
私はコクコク頷いてスプーンを手渡した。

…というか、そもそもこのアイス真城くんが買ってくれたんですけどね!

真城くんとこの感動を分かち合いたいと思って、一口食べる真城くんを見つめて、

「ねぇ、おいしいよね!」

と感想を求めると、

真城くんは少しアイスを味わってから、

「うん、美味しいんだけどさ、それより、僕たち今間接キスしたよね?」

と、彼の手に持たれたスプーンを見ながら、自然に言われてしまった。

その言葉にハッとした私は、急にドキドキが押し寄せて顔が熱くなっていくのを感じる。


そんな私を見た真城くんは意地悪そうに口角をあげると、

スプーンを持っていない方の手で私の顔を自分に向けて、

「僕と君、間接キスしちゃったね?」

と、初めて会ったときの王子様のような、愛想の良い綺麗な笑顔で再度言ってきた。



一瞬で真城くんから視線を逸らした私は、

もうドキドキの加速が凄いことになって、身体中の熱さを和らげるように私はただひたすらにアイスを食べることに専念しようとした、

のに。


彼は、バシッと私の手首を掴んで動きを制止させた。

「…君の今の反応って、僕が『ハルトくん』みたいだったから?」


いつかのときみたいな冷たい表情を携えて、
その綺麗な瞳で私を射抜いている。

どうしてそんなことを聞くんだろうと、分からなくて困惑する。

少しの恥ずかしさで黙りこくる私を見て、
真城くんはその瞳の色をさらに濃くするから、

何が答えかなんて分からないけれど、私のありのままを伝えるしか、ない。

意を決して、私は真城くんの瞳を見つめて、

「…あのね、私、真城くんに、見つめられたから、すごくドキドキして、心臓痛くなっちゃったの。ハルトくんをいくら見ても、こんな気持ちになったこと、ないんだよ」

私の気持ちを、どうにかわかってほしいと必死に話した。

真城くんは、ひどく驚いているみたいだ。