言いたい、言えない、キミが好き。


ペアの人が一緒にいても、すごく怖くて心細かった。

じゃあ、ひとりの前原くんは一体今どんな思いをしているんだろう。


もし彼の立場だったら……って、想像してみる。

私だったら、耐えられない。

怖くて泣いてしまって。でも、震えてきっとその場から動けなくなっちゃう。


前原くんは男子だから、私みたいに泣いちゃうことなんて、まずないと思うけど……。

それに、ある程度時間が過ぎれば、終わったことを察して帰ると思うけど……。


……でも。


「あっ、あのねっ!」


私は足を止めて、朱里と梨花に思いきって声をかけた。

本当のことは言えない。だから、


「ごめん、ちょっとさっきのコンビニに寄って帰るから……」


咄嗟に考えた、嘘。


「じゃ、わたし達も付き合うよ」


「もう遅いし」と続けて、ふたりはこっちに足を向けようとしてくれた。

だけど、ついて来られたら困る。


「ううんっ! お母さんが迎えに来てくれてるみたいだから!」


私が言うと、「そうなの? それじゃあ……」とふたりは納得してくれた。