言いたい、言えない、キミが好き。


考えれば考えるほど、悩んで……困る。

でもそれは、田澤くんへの返事だけのことじゃなくて……。


……あれ?そういえば。

上げられずにいた顔を、私はパッと上げる。

最後のペアが戻ってきて、参加したクラスメート全員が今ここに集まっているはず。

だけど、いない人がひとりいた。


前原くんが……どこにもいない。


まさか……。

嫌な予感がして視線を動かすと、クスクスと何か堪えるように笑っている男子達の姿が目についた。


やっぱり……。

その男子達は、いつも前原くんをいじめているグループ。

どういうことなのか容易に見当がついて、許せなくて、私はぎゅうっと握りこぶしをつくる。

……だけど。


「……って、ことで! 今日は解散で!」


え、待ってよ!

終わりを告げる発言に心の中で声を上げるけど、口に出してないものは誰にも聞こえない。

終わったという雰囲気で、一気にざわつく周囲。


「何だかんだで楽しかったねー」

「そうだね」


隣に立った朱里と梨花も、言いながら当然のように帰る方向を向く。