言いたい、言えない、キミが好き。



「え……?」


自分の目を疑った。
意味がわからなかった。

田澤くんの持っていた懐中電灯に照らされて、私達の後ろに立っていたのは……


前原くんだったから。


「どうして……?」


さっきまでの恐怖心が一瞬にして消えて、目をパチパチさせる私。

前原くんは「驚かせてごめん」と謝ってから、


「おばけ役」


素っ気なく返事すると、合図するようにチラッと目を向けた先は、田澤くん。


あっ!

気付かされた私は、慌てて口をつぐむ。

何も考えずに、ついいつもの調子で話してしまうところだった。


みんなの前では喋らない。

そういう約束だったのに……。


「……ここだったのかよ」


下手に動けなくなってしまった私の代わりに、口を開いたのは田澤くん。

ここだった……ってことは、田澤くんは知ってたの?

思ったのと、ほぼ同時。


「望月、行こう」

「えっ?」


ぐんっと、引っ張られた腕。

田澤くんは私の手を引いて、歩き出した。