他でもない、前原くんのこと。

前原くんがいじめられるようになってから、クラスの中心にいる田澤くんのことが、すっかり苦手になっていた。


気まずいし、怖いし、とにかく早く帰りたい。

まだ着かないのかな……と、田澤くんが照らした道の先をそーっと見る。

だけど、その先は真っ暗。
電灯もない、このか細く気味の悪い道は、どうやらまだまだ続いているみたい。


あぁ……もうやだ……。

いくら一人じゃないとはいえ、こんなの心細くて泣きそうになる。

相手が他の人だったら良かったのに。

そしたら「怖いね」とかって、ほんの少しでも会話出来たのに。


響くのは私達の足音だけ。

静寂が不安を掻き立てて、こみ上げてくる涙を必死に我慢していた。

そんなときだった。


私を気にする様子もなく、スタスタと先を歩いていた田澤くんのペースが、急に遅くなった。


な、何……?


何かあったのかとドキッとして、私も歩く速度を落とす。

すると田澤くんは立ち止まって、こっちに振り返った。