***
グループにひとつずつ用意された懐中電灯。
それを片手に進んでいく田澤くんの一歩後ろを、私は黙ってついていく。
まさかこんな展開になるなんて、思いもしなかった。
よりによって田澤くんと……なんて。
男子とは用事があれば言葉を交わす程度で、前原くん以外に仲の良い人は特にいない。
だから、誰と当たっても同じ。変わらないと思っていたけど……。
ひとりだけいた。
他とは少し違う人。
それが、田澤くんだった。
「……」
スタートしてから会話は一度もなく、お互い黙ったまま。
私が何だか気まずいと思っているように、田澤くんも気まずいと思っているんだろう。
だって田澤くんは、私が田澤くんのことを好きだと思ってるんだもんね……。
考えたら自然とため息が出そうになる。
彼だけじゃない。
朱里や梨花もまだ勘違いしたままで、
『やったじゃん! チャンスだよ!』
なんて、勝手に盛り上がっちゃうし。
それから……。



