中学最後の思い出づくりなら、海とかもっと楽しい場所に行けば良かったのに……。

そんなことを思いながら、久しぶりに見る顔の中、ある人の姿を捜す。


彼もまたクラスメートのひとりだから。

だけど、辺りをぐるっと見渡してみても、彼の姿は見当たらない。


前原くんは来てないんだ……。


少し残念なような気もしたけれど、心の中でホッとする。

だって夏休み前の状況を考えたら、仲良く肝だめしなんて出来るはずがない。

からかわれたり、いじめられる姿を見ずにすむことにホッとした。



「ちゅうもーく! みんな集まったかー?」


そうこうしていると、学級委員の男子が声を張り上げた。

それぞれ雑談していたみんなの視線が、一点に一気に集まる。


「事前に連絡していた通り、これから肝だめし大会をはじめまーす! ルールは簡単、そこの脇道から出発して、ここまで戻ってきてください!」


ピシッと指さされた脇道。

見れば、人が通れるようにはなっているものの、周りには草木が生い茂っていて、明かりのひとつもない。