背後から聞こえてきた、大きなエンジン音。
「あ、バス来た」
前原くんの言葉に振り返ってみると、こっちに向かって走ってくるバスの姿があった。
「一本前のやつ、まだ来てなかったんだ」
「そうみたいだね……」
私がこくんと頷き返している間にも、バスはみるみる近付いてきて。
「じゃあバスの方が断然早いし安全か。気をつけて」
前原くんがそう言ってくれたときには、もう目の前に停車していた。
結局何も言えないまま、バスに乗り込み外を見ると、前原くんが小さく手を振ってくれていた。
私は微笑んで振り返すけど……胸の奥がちくんと痛む。
前原くんが心を開いてくれればくれるほど、嬉しい。
もしかしたらっていう期待さえ、してしまいそうになる。
でも……。
「それって絶対脈アリだって! 早く告っちゃいなよ!」
走り出したバスの中、後方から聞こえてきた声にビクッとした。
少し顔を動かして見てみると、反対側のつり革を掴んで話す女子高生ふたり組。
「そうかなぁ〜」と言いながら、知らない制服を着た女の子が、まんざらでもなさそうに返事していた。



