「なんだ……ごめん」
私の言葉に、前原くんもホッとしたように苦笑する。
そして、外していたメガネを再びかけた。
いつも通りの見慣れた彼の顔。
もう少し素顔を見ていたかったなぁ……なんて呑気に思いながら、首を横に振って『ありがとう』と、言おうとした。
でも……いいかけて止まる。
だって、ねぇ……何に対しての『ありがとう』なの……?
穏やかだった声をピンと張り詰めたものに変えて、顔を伏せるように私に言った前原くん。
自分自身はメガネを外して、気付かれないように気を配った。
誰にって、それは……梨花に。
私の友達に、気付かれないように。
「なんか色々あって中断させちゃったね。続きから説明して大丈夫?」
「……」
「望月さん?」
何事もなかったかのように話す前原くん。
その声は相変わらず優しくて……胸の奥が苦しくなった。
何が『ありがとう』なんだろう。
どうして堂々としていられなかったんだろう。
私は……何をしているんだろう。



