「前原くん、メガネ……」
そう。数秒前までしていたメガネを、どういうわけか前原くんは外していた。
はじめて見る彼の素顔。
二重の目は思った以上に大きく、でも全体的なバランスはすごく整っている。
メガネをかけているときから、薄々気付いてはいたけれど、前原くんって……美男子っていうか、かなりイケメン……。
文字にすると『ぽー』って感じで、見惚れてしまっていた。
それを彼の言葉が現実へと引き戻す。
「今、山本さんっぽい人が通った」
「えっ、どこ⁉︎」
「そこの……本棚の間」
言われて直ぐさま目を向ける。
山本っていうのは、梨花の苗字。
何で梨花が図書館なんかに……?
ドキドキと脈打つ鼓動が早くなり、シャーペンを持ったままの手のひらには、じんわりと汗さえかいていた。
だけど……。
「前原くん……」
彼の言う女の子の姿を確認した私は、肩の力をストンと抜いた。
「あの人、梨花じゃないよ」
髪型とか背格好が、確かに梨花に似てる。
だけど梨花とは別の人だった。



