「そんなこと言われたの、はじめてだ」
少しはにかんだ表情が、私の胸をきゅうっと締め付ける。
「あのね……」
嘘や冗談じゃなくて。
教師に向いてるって、本当に思った。
それをそのまま伝えようとした……そのときだった。
「望月さん、顔伏せて」
「え?」
「いいから早く」
急に変わった前原くんの声色。
さっきまで穏やかだったのに、急に張り詰めた緊張感のあるものになって。
な、何……?
私は戸惑いながらも言われた通り、俯くみたいに顔を伏せる。
そのまま数秒間。
「もういいよ」と言われた声に顔を上げると、
「あ、あれ?」
目の前には、見慣れない顔の男の子。
私の反応に「ん?」と、その男の子は首を傾げる。
それもそのはず。目の前に座っているのは前原くんで、変わっていない。
彼の後ろや隣に、誰が他の人がいるわけでもない。
ただ、さっきまでと決定的に違うのは……。



