前原くんの教え方は、すごく丁寧でわかりやすい。
そして……前原くんの声は、聞いていてすごく心地良い。
同じ英文でも、学校の先生が読むと退屈なのに、前原くんが読むと聞き入ってしまう。
それは私が彼のことを好きだからなのかもしれない。
だけど、低すぎず高くもない声は聞き取りやすく、大嫌いな英語のはずなのに、もっと聞いていたいって思う。
「前原くんってさ……先生とか向いてるよね」
「え?」
まだ説明の途中だったのに、ついもれてしまった心の声。
当然のように前原くんは、私の顔を見る。
「や、えっとごめん!いつもすごく分かりやすく説明してくれるから……」
これじゃ聞いているんだか、聞いていないんだかわからない。
慌てた私が言うと、前原くんはキョトンとした顔を笑顔に変えて、「ありがとう」と言った。



