言いたい、言えない、キミが好き。



「それじゃあ……英語だったっけ」


向かい合って、空いていた隅の席に座った私達。

言いながら前原くんは、見慣れた英語の教科書と夏休みの課題集を机の上に置いた。


「望月さんがわからないのってどの辺?」

「えっとね……このあたりなんだけど」


自分の課題集の全く答えが分からず、回答欄が空白のままのページを開いて、前原くんに見せる。


「あ、確かにちょっと厄介なところだ。ここは……」


問題を読みあげて、小声で文章の成り立ちから説明してくれる前原くん。

学校の図書室でも教えてもらっているけど、前原くんの説明はいつもわかりやすい。それから……。


「……で、ここはこういう訳し方になるんだけど。望月さんわかった?」

「あっ、うん!」


問いかけられて、少し慌てて頷く。

やばい、ちょっとボーっとしちゃってたかも。
聞いてないとか思われちゃったかな……。

探るように見ると、前原くんは特に何も気にしてない様子で説明を続けていて、ホッとする。