「や、望月さんが変とかそういうわけじゃなくて……。その……」
言いづらそうに目を逸らし、言葉を濁す前原くん。
「何ていうか……かわいいから」
「……え?」
「まぁ、とりあえず入ろう」
確認する間もなかった。
前原くんはすぐに私背を向け、先に図書館の中へと入ったから。
私も彼の後を小走りで追いかける、けど……。
胸の鼓動がドキドキして、しょうがない。
かわいいって、言ってくれた……?
広い館内を迷うことなく進んで、机が並ぶスペースまで歩いていった前原くん。
「この辺でいい?」
他の人の邪魔にならないように、小声で前原くんは問いかけてくれたけど、席よりも気になったのは彼の様子。
ちょっとだけ赤くなってるように見えるのは、気のせいかな……?
「望月さん?」
「あっ、うん、ここでいいよ!」
ハッとした私は、目の前の机にトートバックを下ろした。
結局、さっきの言葉を確かめることは出来なかったけど、少し照れたみたいな表情が答えのような気がして……嬉しくなった。



