それから、私と前原くんは図書室で、毎朝のように一緒に勉強した。
夏休みに約束していることもあって、ラインも交換した。
こうして仲良くしていることは秘密。
教室や他の生徒がいる場所では、話しかけたりしないように気を付けた。
そして誰にも気付かれぬまま、迎えた夏休み──。
「晩ご飯までには帰るから!行ってきまーす」
夏休みに入ってすぐの、平日。
私は少し早めの昼食をとってから準備して、家を出た。
『勉強しに行くのに、やけにオシャレするのね』と、嫌味ったらしくお母さんに言われた服装は、胸元にリボンが付いたブラウスと、膝よりほんの少し短い丈の小花柄シフォンスカート。
きっと、本当は街にでも遊びに行くと思われちゃったんだろう。
でも、勉強するのは嘘じゃないもん。
ただ一緒に勉強する相手が、好きな男の子っていうだけ……。
“好き”って心の中でちょっと思っただけなのに、顔から急に熱くなって、私はごまかすように足を急がせた。
そう、今日は以前から約束していた、前原くんと図書館で勉強をする日。



