『また変に誤解されちゃったら、困るでしょ』
ふたりっきりの図書室で、前原くんが私に続けた言葉。
何のことを言っているか分かったから、思わず口ごもった。
変に誤解……それは、田澤くんのこと。
私が田澤くんのことを好きだって、朱里たちに誤解されていることを指していると分かったから、何も言えなくなった。
私は前原くんのことが好き。
だから何か勘ぐられても、それは誤解なんかじゃない。
だけど、前原くんは……?
気付かれないようにもう一度、そっと前原くんの方を見る。
ついこの前まで倒されたりしていた彼の机は、ちゃんと在るべき場所に立っていて。
夏休み直前。テストや進路のことで、ここのところ忙しかったせいか、前原くんの周りは以前よりも静かだった。
「……」
このままイジメが収まってくれたらと思う。
だけど、私とのことがもしウワサになってしまったら。
想像したら、前原くんの提案を受け入れないわけにはいかなかった。
だって困るのは……前原くんだから。



