私だって、生半可な気持ちで「大丈夫」なんて言ったわけじゃない。
だから、そんなずるいようなことはしないつもりだった。
だけど……。
「そういえば昨日の放課後、見たんだけどさ……」
耳を澄ませば、必ずと言っていいほど1日に一度は耳にする、似たようなウワサ話。
誰と誰がいつ、一緒にいて。だから付き合っているとか、いないとか……。
いつからこんなに色濃く、男女という線引きがされるようになったんだろう。
少しでも異性とふたりでいたりすれば、簡単に誤解される。
「あ……」
誰が発した声、というわけでもないけれど、自然と少しざわついた教室。
見ると、私より少し遅れて教室に入ってきたのは前原くん。
目と目が一瞬パッと合って。
だけど、どっちからってこともなく、お互いが目を逸らした。



