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「実優おそーい。また寝坊?」
予鈴が鳴るギリギリ。図書室の鍵を返しに行った前原くんより先に教室に戻ると、少し呆れ顔の朱里に迎えられた。
もちろん、寝坊なんてしていない。
みんなよりずっとずっと早く学校へ来ていた。
だけど、
「まぁ……そんな感じ」
真実を隠して、私もが返したのは苦笑い。
『望月さんにさ、お願いがあるんだけど……』
そう前原くんに切り出されたのは、図書室を出る直前だった。
『教室とか人のいるところでは、話しかけたりしないことにしない?一緒に勉強することも、ふたりだけの秘密ってことにして』
言いながら、優しく微笑んだ前原くん。
“ふたりだけの秘密”という言葉はとても甘くて、思わず顔を赤らめてしまいそうになったけど、喜んじゃいけないってすぐに気付いた。
また、私もを庇おうとしてくれているって。



