言いたい、言えない、キミが好き。


***


「実優おそーい。また寝坊?」


予鈴が鳴るギリギリ。図書室の鍵を返しに行った前原くんより先に教室に戻ると、少し呆れ顔の朱里に迎えられた。

もちろん、寝坊なんてしていない。
みんなよりずっとずっと早く学校へ来ていた。

だけど、


「まぁ……そんな感じ」


真実を隠して、私もが返したのは苦笑い。




『望月さんにさ、お願いがあるんだけど……』


そう前原くんに切り出されたのは、図書室を出る直前だった。


『教室とか人のいるところでは、話しかけたりしないことにしない?一緒に勉強することも、ふたりだけの秘密ってことにして』

言いながら、優しく微笑んだ前原くん。


“ふたりだけの秘密”という言葉はとても甘くて、思わず顔を赤らめてしまいそうになったけど、喜んじゃいけないってすぐに気付いた。

また、私もを庇おうとしてくれているって。