「前原くん、ここ受けるの!?」
問題集の表紙に書かれていた、高校の名前。
それは、国立大学附属の高等学校。
「あー……まぁ、一応ね」
驚きのあまり身を乗り出した私に、謙遜するみたいに苦笑する前原くん。
その返事を聞きながら、問題集を手に目をパチパチさせた。
賢かった気はしていたけれど、まさか……こんなに頭が良かったなんて……。
「……すごい。すごいねっ!」
「いや、まだ受かったわけじゃないし……」
「ううんっ!すごいよ!」
国立大学付属の高校なんて、受験するだけでも相当なレベル。
そりゃあ先生だって、快く図書室の鍵を渡しちゃうわけだ。
「前原くんなら合格出来る気がする! っていうか、絶対合格する! 私応援してるっ!」
「……」
静かな室内に響いた声。
ハッと気付いたときには、少し驚いた様子の前原くんの顔が目の前にあった。
……わ。何ひとりで興奮しちゃってるんだろう。
恥ずかしさで、顔がカーッと赤くなる。
「ご、ごめん……」
謝りながら問題集を机の上に戻すと、
「いや、ありがとう」
前原くんはにっこりと微笑んだ。



