私を見たうえで逸らされた顔は、もう話なんかしたくないという前原くんの気持ちなのかもしれない。

でも……それでも。


「っ、前原くん……!」


私は前原くんの前に出て、声をかけた。


急に目の前に出てきた私に、前原くんは驚いたように目を見開く。

眼鏡の奥の黒い瞳に映る、自分の姿。


「あっ、あのね、私っ……」


前原くんに謝りたい。その一心で口を開いた……のに。


「っ……」


グッと唇を噛んだ前原くんは私の腕を掴んで、そのまま背を向けた。
そしてバス停を離れ、学校とは逆方向にずんずんと進んでいく。


「えっ、あのっ……」


何が起こっているのか理解できず、腕を引かれるままに連れられる私。

やっと足を止めたのは、進んだ先の道の角を曲がった所。