その日も朱里は部活で、梨花は補習で、先に帰ってと言われた私は授業が終わって割とすぐに、ひとりで学校を出た。
すると目に入った人影。
そこは先日、前原くんに会った学校前のバス停。
全く予想していなかったわけじゃない。
もしかしたら……って、ほんの少し期待して、教室に前原くんが残っていないのを確認すると早足で出てきた。
だけど、驚きのあまり思わず足を止めたのは……前原くんが私のことを見ていたから。
「……」
真っ直ぐ向けられた視線に、ぐっと息が詰まる。
もしかして前原くんも話をしたいと思ってくれたの……?
なんて、都合の良いことを考えてしまった瞬間。
フイッと逸らされた顔に、ズキンと胸の奥が痛んだ。
……そりゃあそうだよね。
あんなことをしておいて、許されるわけがない。
挨拶したくらいで、どうして謝ったような気持ちになっていたんだろう。
むしろ、何もなかったかのように挨拶したことに、前原くんは怒っているかもしれない。



