「はよ!」

「おはよー」


自然と男女の区別もなく、教室のあちこちから起こる挨拶。
それは彼がとても人気者だから。


「あー……田澤?」


さっき納得のいかない顔をしていた梨花も、何だといった感じで名前を挙げた。


「まぁ、前原のわけないよねぇ……あいつ全然喋んないし。でも、実優が田澤を好きとかちょっと意外」

「うんうん、あたしも。実優ってそんなミーハーなタイプじゃないと思ってたし」


勝手に頷き合って、話をまとめるふたり。

田澤くんは野球部のエースで、頭こそ坊主ではあるけど、顔はいわゆるイケメン。
性格は少しやんちゃ。でも、底抜けに明るくて、クラスの中心にいつもいる人。

彼のことが好きだったり、ファンだという女子が沢山いるのは知ってる。
だから、ふたりが「あぁ……」ってなるのは分かるけど……。


「ちょっと待って。私、田澤くんが好きとか言ってないんだけど!」


本人に聞こえちゃまずいから小声で、私は力いっぱい否定した。

……それなのに。