あのときと一緒だった。
玄関で無視されてしまった……あのときと。
近付いてくる私に気付きながら、目を逸らしたのは前原くん。
怖れていた展開に、胸の奥を切り付けられた……そんな感覚にさえ陥った。
だけどそれでも、あのときと決定的に違ったのは……、
「まっ、前原くんバイバイっ!」
どうせ嫌われているなら、もうどうにでもなってしまえ。
私はバス停を通り過ぎる瞬間、しっかりと伝わるように声をかけた。
前原くんがどんな顔をしたのか分からなかったのは、私が逃げたから。
「バイバイ」って、言うだけ言って……走り去るみたいに通り過ぎた。
「っ、はっ……はっ……」
あんなに重かった足を嘘のように動かし、私がやっと立ち止まったのは、前原くんからは見えない曲がり角を曲がったところ。
息が上がって、強く脈打つ鼓動が苦しい。
目を逸らされたのに挨拶なんかして、きっとものすごく変な奴だと思われたと思う。



