急に予定がなくなって、時間がぽっかりと空いてしまった。

どうしよう。駅前の方にでも、ひとりで寄り道してみようかな……なんて考えながら、スマホをポケットに入れ、顔を上げた瞬間だった。


「……え」


私の目に飛び込んできた人。

その姿に、思わず足を止める。


学校を出て、すぐの場所にあるバス停。

そこに立っていたのは……他の誰でもない前原くんだった。


うちは普通の公立の中学校。

バス通学の人なんて、ほとんどいない。

これからどこか行くのだろうか……って、そんなこと今はどうでもいい。


絶好のチャンスだった。

前原くんに声をかける、絶好のチャンス──。