「大丈夫だよ。朱里には内緒にしておいてあげるから」

「本当っ⁉︎ ありがとう実優!愛してる!」


私が言うと、パァッと表情を輝かせ、梨花は抱きついてきた。


「実優に彼氏が出来たときは、あたしに遠慮しなくていいからね?っていうか、いつでも協力するから!」

「あ、ありがと……」


ギュッと手を握られて、苦笑いを浮かべつつも頷く。すると、


「それじゃあまた明日ね!」


さっきまでの浮かない表情が嘘みたいに、梨花はとても嬉しそうな笑顔を向けて、大きく手を振った。


私に“彼氏が出来たときは”か……。

そんな日がいつか来るのかな……って、手を振り返しながらぼんやりと考える。


思い出すのはやっぱり前原くんのこと。

好きな人……前原くんに自分の気持ちはおろか、話しかけることすら出来ずにいる私が、そういう関係を作ることが出来るんだろうか。


梨花の姿が見えなくなって、梨花とは逆方向の道に向き直った私が、ゆっくりと足を進めながらカバンから取り出したものは、ネコのキャラクターがプリントされてあるピンク色のケースに入ったスマホ。