「ふたりともおはよー……って、あれ?どっか行ってたの?」


教室前の廊下で、タイミング良く出くわした梨花。

玄関とは逆の対面から向かってきた私達を見て、小さく首を傾げた。


「あぁ、うん。体育館にシューズ忘れて帰っちゃってさ。ちょうど玄関で会ったから、取に行くの付いて来てもらってたの」

「そうなんだー。実優が早いとか珍しい」

「ね」


顔を見合わせ、クスッと小さく笑うふたりに、「私だってたまには早く来るよ」と、頬を膨らます。

でも、今日早起きしたのには、ちゃんと理由があって……。


本当は前原くんに、挨拶がしたかった。


彼への想いに気付いたあの日。

心配した梨花に送られ帰宅した私は、これからどうしたらいいのか、ずっと考えていた。


前原くんに嫌われてしまったかもしれない。

でも……このままなんて、絶対に嫌で。


とにかくもう一度、話がしたいと思った。

前原くんと、話がしたい。

その為にもまず、挨拶でもいいから声をかけよう、そう決意したのだけど……。