好きな人はいない。でも、気になっている人なら……いなくもない。


そっと視線を動かして、私の目に映ったのは、廊下側の一番後ろの席。

そこに座っていたクラスメートは痩せ型にメガネの男子で、物静かに読書をしていた。


「……まさか、前原のことが好きなの?」

「えっ!?」


怪訝そうに探る梨花の声に、すっとんきょうな声を上げる。

私は少し慌てながら、


「違うよ!そういうわけじゃなくてっ!」


一生懸命、説明しようとした。だけど、


「梨花、違うって。前原じゃなくて……」


横から口を挟んだのは朱里。

梨花と一緒に、クイッと顎で合図した朱里の視線の先を追うと……ちょうどクラスメートの一人が、前原くんの後ろを通って教室に入ってきた所だった。