前原くんは、黙って靴の中からゴミを取り除くと、それを履いた。

トントンと、つま先を床に叩きつける音が響く。


その様子を私はずっと見ているのに、彼はこっちを、私を……見ようともしない。

結局そのまま、両手に持ったゴミを近くのくずかごへと捨てて、前原くんは校舎から出て行った。




「……」

「実優、ごめんっ!」


下駄箱まで行けず、玄関の前に立ちつくしていた。そんな私に声をかけてくれたのは、梨花だった。


「進路のプリント、すっかり出し忘れちゃっててさぁ……って、実優!?」


私の顔を見た梨花が、驚いた声を上げる。それは……。


「えっ、ちょっ……何で!? 何で泣いてんの!?」


私の目から、涙が零れ落ちていたから。

自分でも、どうして泣いているのか分からない。

……泣く資格なんて、私にはないのに。


「どうしたの? 誰かに意地悪でもされた?」

「っ、ううんっ……」


心配そうに声をかけてくれる梨花に、首を横に振る。