「あぁ、うん。そうだね」
合わせるように返事しながら、少し困る。
前ほど面白いと思えなかった、主人公にあまり共感出来なかった……なんて、言えない。
だけど、そんな私の様子に気付くこともなく、
「だよねだよね!あのシーンとか、ヤバくなかった!?」
話をヒートアップさせる朱里。
本当は頭の中にほとんど内容は残っていなくて、何とかやり過ごすように頷いていると……。
「でもさ、ユウって田澤にちょっと似てない?」
唐突に朱里が、既に教室に来ていた田澤くんを見ながら、そう言った。
ユウっていうのは、マンガの中のヒーローの名前。
私は「え……」と呟きながら、つられるように田澤くんの方を見る。
クラスの中心。
男女関係なく集まる人の輪の中で、スマホを片手に笑う田澤くん。
みんなに好かれて人気者で……っていうその姿は、確かにユウに似ていた。
だけど……。
ううん、だから……?



