「ちょっと!何で実優まで呆れた顔すんの!?」

「や、だって……」


わざわざ言われなくったって分かる。
ケンカの理由は、きっととても些細なこと。

ちょうど3年生になった頃、梨花に高校生の彼氏が出来た。
それから何度、『そんなことでケンカ?』と言いたくなる愚痴を聞かされたことか……。

言ってしまえばいつも、梨花のちょっとしたヤキモチが原因だ。

それをハッキリ口にしたわけではないけれど、私はが言わんとしていることは何となく察したようで、


「現実はマンガみたいに甘くないんだからね」


梨花はちょっと拗ねたように呟いた。そして、


「ふたりともマンガばっかり読んでないでさぁ……好きな人とかいないわけ?」


頬杖をついて、ムスッとした表情のまま聞いてきた。

好きな人……。


「あー……そういうの、あたしは高校生になってからでいいや」

「朱里はそう言うと思った!で、実優は?」

「へっ、私?」


まるで睨みつけるかのような鋭い目で見られて、思わず言葉を詰まらせる。