結局その日も前原くんはいじめられるがまま。何も変わらない1日が過ぎた。
学校から帰ってきて、お母さんにただいまと挨拶すると、すぐさま向かった自分の部屋。
鞄を下ろし、制服のリボンを解いて、私が手に取ったのは机の上に置きっ放しにしていたマンガだった。
ベッドに腰掛けページを開くと、一気に思い出される内容。
それはクラスでは目立たない地味な高校生の主人公が、学校一のイケメンで人気者の同級生に恋をする話。
スポーツ大会で飛んできたボールから助けてくれたり、僻んで陰口を言う女子から守ってくれたり、理想とも言えるヒーローの姿にすごくキュンキュンしていた。
こんな恋がしたいって憧れていた……はずだったのに。
朱里から借りた最新刊でも、相変わらずカッコイイばかりのヒーロー。
くっつきそうでくっつかない、ヒロインとの関係もすごく気になっていたはずだったのに……どうしてなのか、前ほどのめり込んで読むことは出来ず、パタンとマンガを閉じた。
そして、嫌でも頭に浮かんできてしまうのは……前原くんのこと。



