「そういえば、マンガ読んだ?」


いつの間にか切り替わっていた話題。

急に話を振られた私は、「あっ!」と思い出したように声を上げる。


そうだ。昨日借りたマンガ、家の勉強机の上に置きっぱなしで、忘れてた……。


「もう、気になってたんじゃないの?」

「ごめんごめん!今日読んで明日持ってくるから!」


「実優のために発売日に買ったのに」と言う朱里に、両手を合わせて謝る。


続きが気になっていたのは本当。

でも、言い訳をするならば、昨日はマンガのことを忘れちゃうくらい、あの一件のことしか考えていられなかった。

……なんてもちろん、朱里本人には言えないけど。


「まぁ、急いで返さなくていいからいいんだけどね」


不満そうだった表情を、朱里がフッと笑顔に変えて。その表情に、ホッと胸を撫で下ろした……そのときだった。


「お前ら悪ノリしすぎー」


教室の中を飛び交う声のひとつが、私の耳に届いた。

その声の主は……田澤くん。