「実優……?」


私と、向かい合って立つ前原くんの姿を見て、目を見開いた後に、


「……ちょっと!」


朱里は私の手を引いて、半ば強引に教室の外へと連れ出した。


「あ、朱里?」


掴まれた腕が少し痛い。

何だか怒っているようにも思えて、戸惑いつつも声をかけた。

すると、やっと足を止めてくれた朱里は振り返り、


「何やってんの」

「え?」

「誰かに見られて、変な誤解されたらどうすんの?」


眉間にシワを寄せて、珍しく怒ったように言った。


「……変な誤解?」


その意味が、私には全く分からない。

聞き返すと、「ホントお人好しなんだから」と、ため息交じりに呟かれて。


「前原のことが好きだとか、付き合ってるとかって、ウワサにでもなったらどうすんの?」

「え……」


朱里の言葉に、私の思考は止まった。

それって……。