「望月さん……?」


いきなり何をしているんだろうって思うよね。

不思議そうに名前を呼ぶ声が聞こえるけど、やめない。

だってここにあるから。


「っ、取れたっ……!」


何年分?っていうくらいのホコリを落としながら、私がやっと手に取ったのは国語の教科書。

1時間前に隠された、前原くんのもの。


吸ってしまったホコリに咳きこみながら、教科書を軽く手で掃って……前原くんの方を向く。

誰もいない隙に、前原くんに返してあげるつもりだった。……だけど。


「それ……」


目を丸くして呟いた、前原くん。


「えっと、ね……」


驚いた様子の彼の表情に、私を急に襲ってきたのは罪悪感。


隠された場所を知っていた。
それなのに、教えてあげられなかった。

自分が今していることは、都合良く親切にしているだけ……。

偽善者でしかない。


それに気付いて、見透かされた気がして、何も言えなくなった。すると、近付いて来たのは前原くんの方。