「っ……」


息を切らして教室へと戻ると、そこには残っていた男子がひとり。

何となくそんな予感はしてた……。


教室に入ってすぐの場所。
床にはバラバラに散らばった教科書たち。

それを拾っていたのは……前原くん。


私を見て「あ……」と、小さく声を漏らした前原くんの姿に、チクンと胸の奥が痛んだ。

散らばった教科書はきっと、他の男子達にやられたんだと思う。

……それなのに。


「びっくりした。どうしたの?」


何でもないように、前原くんは私がに声をかけてきた。


「あの……」


戸惑いながらも、手伝おうと伸ばしかけた手を、私は引っ込める。

戻ってきたのには、ちゃんと理由があって。

それは……。


前原くんの横を通り過ぎ、足早で向かったのは、掃除用具が入ったロッカーの前。

「ふー」と一旦息を吐いてから、つま先立ちで手を伸ばす。