「昨日は悪かった」

「え?」

「日直」


仏頂面でそれだけ言うと、田澤くんは私に背を向けた。


「……」


ポカンとしながら、遠ざかってゆく背中を見つめていると、


「何で?何で田澤が実優に謝んの?」


とても不思議そうに梨花が首を傾げた。


「それは……」


私にもよく分からない。

「日直」とは言っていたけれど、私が代わってあげたのは梨花で。
田澤くんが謝るべき相手は、前原くんの方だと思う。

ただ、ひとつ心当たりがあるとすれば……。


「もしかして、実優に気があるんじゃないの?」


ちょっと冷やかすような朱里の言葉。

梨花は「あっ!」と声を上げ、口元を手で隠し、目を輝かせるけど……、


「そんなことないよ。……っていうか、たぶん逆」


昨日、クラスメートの男子にからかわれて、明らかに迷惑そうな顔をした田澤くん。

つまり、少しでも私なんかと噂になるのが嫌で、前原くんに代わりを頼んだわけで……。

そのことに対して、謝ってきたんだろう。