そうかな……って、心の中で疑問に思った。

だって、読書をする前原くんの姿勢はすごく良い。


ガヤガヤ騒いでいる男子ならともかく、前原くんが邪魔になることってあるのかな……。

考えすぎは良くないけど……何となく違う気がした。


あれは田澤くんの言いがかりっていうか……。


「望月」

「ん……」

「望月」

「ちょっ、実優!」


ボーっとしていた私は、梨花達に声をかけられるまで気付かなかった。

『望月』という、決してふたりはしてこない呼び方。それから低い……男子の声。


ハッとして顔を上げると、


「……え」


驚きのあまり、思わず声が漏れた。

私の目の前に立っていた人は……田澤くんだったから。


「……」


どうして?……と、目を丸くすることしか出来ない。
田澤くんが私に用なんて、心当たりなんか全くない。

それにこのタイミング。

あるはずないけど、田澤くんは超能力者で。
私の心の中の声が聞こえてしまったんじゃないかと、本気でヒヤリとしたときだった。