「謝る相手は私じゃないよ……」
とても言わずにはいられなかった。
すると、田澤くんは驚いた顔をして、それから躊躇いがちに目を逸らして、黙り込んだ。
いつもクラスの中心にいて、何でも出来て、マンガの中のヒーローみたいな田澤くん。
そんな彼の『らしくない』姿を見て、本当に自分のことを想っていてくれたんだと、やっと実感する。
やり方は、伝え方は間違っていたかもしれないけど……。
「……私のことを好きって言ってくれたのは、嬉しかった……です」
緊張して手も声も震えた。
でも、
「ちゃんと返事出来なくてごめんなさい……」
あやふやだった私の態度。
はっきり自分の気持ちを言わない私の行動が、もしかしたら田澤くんを追い込んでしまっていたのかもしれない。
そう思った……。
そんなことがあったりして、全部が綺麗に片付いたわけじゃないけれど、穏やかで忙しい日々は過ぎていった。
そして……数ヶ月後に迫った高校受験。
先生と話して、両親とも相談して、私は希望していた学校よりも少しランクの高いところを受験することにした。
正直、合格出来るかは微妙なところ。
それでもチャレンジしてみようと思ったのは、少しでも前原くんに近付きたかったから。
彼の志望校からしたら、私の目標なんて全然低いかもしれないけど……可能性を広げてくれたのは、前原くんだから。



