それに……初めて見た前原くんの笑顔はとても温かくて。

きっとみんなが思っているほど、暗い人なんかではないと思った。


結局昨日は入学したときの出来事について、何も話せずじまいだったけど、もう少し話をして仲良くなれたら……話してみようと、お礼を言いたいと思った。

……そのことも含めて、


「あのね、実は……」


本当に気になっているのは田澤くんじゃなくて、前原くんなんだってことを、私は勇気を出して、ふたりに素直に伝えようとした……そのときだった。


ガタンッ!


教室の後方で何かがぶつかったような、大きな音が響いた。

私はもちろん、梨花も朱里もクラス中のみんなが、反射的に音のした方へと目を向ける。


するとそこには、机の位置からは大きくずれた椅子と……


そこから転げ落ちそうになっている、前原くんの姿があった。


そしてその後ろには……田澤くんの姿。