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「え……前原くんが?」
「うん、わたしと梨花に言ってきたんだよね。実優のことよろしく頼む……って」
朱里と梨花にそう教えられたのは、気持ちが落ち着いて、家に上がってもらってからだった。
「あの後さ、実優教室に戻って来なかったでしょ? 結構大変なことになってて、わたし達もどうしたらいいかわからなくて……」
「ね」と、顔を見合わせる朱里と梨花。
聞けば、その日はふたりともあまりに唐突な出来ごとに動揺して、ほとんど会話もなく帰宅しようとしていた。
そこを、前原くんに呼び止められ、自分のことで私を巻き込んで申し訳ないと思っていること。
私は何も悪くないから、どうか変わらず傍にいてあげてほしいということを、ふたりに直接話してくれたらしい。
「そんなの言われなくてもわかってるし!……って言ってやりたかったところなんだけど、本当はちょっと戸惑ってて。前原に言われた後に、やっと実優のこと、ふたりで話したんだよね」
朱里の言葉に、梨花はこくんと頷く。
そして出た答えというのが、
「あたし達はやっぱり実優のことが好きだから、ふたりで実優のこと支えようって」
にっこり微笑んで改めて言われた言葉に、胸がじーんと熱くなる。
でもすぐに、梨花の表情は何だか物寂しげなものに変わった。



