上村っていうのは、朱里の苗字。

何で朱里が……?

予想外の人物に戸惑って、何も返事出来ずにいると、


『……実優?』


受話器から聞こえて来たのは、問いかける朱里の声。そして、


『実優なの!? 実優ごめん、お願いだから出て来て!』


今にも泣き出しそうな、梨花の必死な声。


──ガシャン!

それを聞いて、私は咄嗟に受話器を戻していた。


だって、なんで……。
どうして朱里と梨花が……。


動揺して、受話器を押し戻したままの手が震えている。


ピンポーン、ピンポーン。

再び家の中に鳴り響くインターホンの音。

何の心の準備もしてなくて、今ふたりに会うのは怖くて、このまま出ずにいようかとも思った。でも……。


「実優!」


外から聞こえるふたりの声。

今出なきゃ、ふたりに会わなきゃ何もかもがダメになる。

そんな気がして、私は恐る恐る玄関のドアを開けに行った。

……すると、