しんと静まる室内。

そういうつもりはなかったんだけど、ちょっと暗い雰囲気にしちゃった……?


「えとっ……」


空気を変えようと、慌てて声をかけようとした。

でも、先に口を開いたのは前原くんの方だった。


「望月さんは優しいね」

「え……」


言われた言葉に目を見開く。

目の前の前原くんは……柔らかく微笑んでいて。


「あ、ごめん。話しかけるから進まないね」


そう言って視線が落とされた先は、私の手元の日誌。

『今日の出来事』には、まだ一文字も書けていない。


「あっ、こっちこそごめん!急ぐね!」


指摘されて、私は逃げるように日誌へ顔を落とした。


何から逃げた……って、それはきっと自分の感情から。

顔が熱くなるのを感じて、見られたくないと思った。

それから何故だか分からないけど、泣きそうになった。


……うそ。

本当は嬉しくて。
嬉しくて泣きそうになった。