事の発端である田澤くんにゆっくり視線を向けると、何か気まずいような顔をして逸らされた。
そして、まるで自分を睨むかのように見る、田澤くんと仲の良い女子の姿。
望月さんの友達ふたりはと言うと、うつむいたまま顔を上げようとはしない。
クラスをこんなにしたのは、望月さんの周りをこんなにしたのは……自分。
だからこそ、不安にならずにはいられなかった。
何も変わらないこの教室で、自分がいなくなった後も、望月さんは過ごしていかなきゃならない。
自分を庇って声を上げ、先生に全てを話してくれた望月さん。
結果としてその行動は、いじめの実態を先生に知らしめてしまったわけで。
残された望月さんがどうなるか……。
想像したとき浮かんだ風景。
それは今まで自分が見てきた、ひとりぼっちの風景だった。
そんなの……絶対嫌だ。
クラスメートの謝罪。それから、どうしていじめがいけないのかっていう、どこかで聞いたような先生の話を聞きながら、
ぎゅうっと握りこぶしをつくった。



