「え……」


自分の言葉に望月さんは目をパチパチさせ、その次の瞬間、


「そうかも……」


言いながらふっと、苦笑にも似た笑顔を見せてくれた。


「やっと笑ってくれた」


それだけで満たされる心。

だけど言った言葉は、笑わせるための嘘なんかじゃない。


「望月さんは優しいよ」


世界中の誰よりも。

自分にとって優しい人は、望月さん。


この学校に入学した日。

クラス名簿を見て、“実優”って名前だと知ったとき、望月さんにピッタリだって思ったんだ。

そのときの気持ちは今も変わらない。


「そんなこと言ってくれるの、前原くんだけだよ……」


望月さんは涙を浮かべながら、やっと……はにかんだ笑顔を見せてくれた。

それを見て、安心する。


自分が最後に見たかったのは、罪悪感でいっぱいの泣き顔じゃなく、笑顔だったから。

望月さんにはずっと笑顔でいてほしかったから。


──でも、自分はひとつ大切なことを忘れていたのかもしれない。

それは……。