「……ちゃんと話聞いてた?」

「聞いてたよ! 聞いてたけど……でもっ……」


望月さんは、“納得できない”と言わんばかりの表情をする。


「意外と望月さんって強情なんだね」

「っ!」


からかうみたいに苦笑して言うと、少し拗ねた様子で顔を逸らされた。


でも……そうかもしれない。

同じ時間を過ごしたぶんだけ、罪悪感や後悔が積もってしまったわけで。

数十分話したくらいでそれらの感情が消えるのなら、世界中の悲劇や争いはきっと起こらない。


何て言えば少しは納得してくれるかな……。

顔を逸らしたままの望月さんを見つめながら、考えて。

思ったことは、見つけた答えは──。


「優しいか、優しくないかってさ……相手が決めることじゃない?」


ふたりきりの保健室。

小さく問いかけた言葉に、望月さんは顔を向ける。


「相手が決めること……?」

「そう、接した相手が決めること。だってさ、自分で自分のこと優しいとか言う人って、だいたいろくでもないじゃん」