「望月さんが教え方上手いって、教師に向いてるって言ってくれたから」


いじめられているような人付き合いの苦手な人間が、教師になりたいなんて自分でもどうかしてると思う。

でも、こんな自分だからこそ、伝えられることもあるような気がした。

それを気付かせてくれたのは、他でもない望月さんだ。


そんなのお世辞だったのにと、びっくりされていたらどうしようか。そんな不安を抱きながら見ると、


「うんっ!なれるよ! 前原くんなら絶対、素敵な先生になれるよ!」


涙ぐんだ瞳を輝かせて。
保健室に響き渡るくらいの力強い声で。

望月さんは大きく頷いてくれた。


「その顔……」

「えっ?」


一度はキョトンとしたけど、すぐにフッと笑う。


「望月さんのそういうところ、好きだよ」

「え……えっ!?」


思ったことを素直に口にすると、望月さんは真っ赤に顔を染めた。でもすぐに、


「どうしてあたしなの……?」


涙を堪えるようにぎゅっと下唇を噛んで、そう聞いてきた。